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こんにちわ♪

こんにちわ♪

類人猿万歳!

ブランディ


今まで、俺は獣医として。

けっこういろいろな患者さん(動物ね)を診察してきた。

そのほとんどは。
イヌであり。
ネコであり。
ウシであり。

そして時々。
ハムスターや。
ウサギや。
小鳥を診察。

すっごい稀に。
カメや。
イグアナ。
大蛇(パイソン系)。
オウム。
猛禽類。


まぁ、上記は日本でも一般に来院される方々だ。
そのほかにも、俺の患者さんの中でかなりきわものがいるんだ。

それは、俺の獣医人生の中で。
最もインパクトがあり。
最も恐ろしい患者のひとつであり。
たぶん忘れる事ができない患者であろう。


タンザニア在住中。
俺の診療所は、アフリカ最大の湖であるビクトリア湖の辺の町にあった。
そのビクトリア湖には、小さな島がたくさん浮かんでいる。
その島のひとつに、『サーナネアイランド』と呼ばれる島がある。
その島は、島全体がかる~い動物園みたいになっているんだ。

タンザニアは最貧国のひとつだ。
正直動物園なんか作っている余裕はない。
これは、過去植民地時代の遺産らしい。

そこの住民たちの治療に。
俺は時々行ったんだ。
ハイエナのワクチン接種。
顔面神経痛のライオンにぶすっと抗生剤注射。
怖くて誰も触れないひょうの診察(といっても何もしなかったけど)。
保護されたダチョウの赤ちゃんの健康診断。

まぁここでの仕事はそんなに多くない。
時々、レンジャーの要請があって彼らが迎えに来て一緒に行ったんだ。


そんなサーナネの住民に。
チンパンジーがいた。
彼の名はブランディー。


やつは、俺の顔を見るたびに。
ビールをくれ、とねだる。
そして、俺がタバコを吸いだすと。
俺にもくれ、とねだる。


本当なんですよっ。
一度俺はやつにタバコをあげた事があった。
レンジャーのおっちゃんからは、『今禁煙中だからあげないでくれ』と言われたけど、ねだったからあげてみた。

まじでね。ふぅーっってな感じで吸いやがる。
かなりうまそうだ。

ビールは時々レンジャーと一緒に飲んでいたようだ。
なんとこいつは、空き缶を改造した、自分のコップを持っていて。
俺がコーラかなんかを飲んでると、『俺にもくれ!』とコップを差し出すんだ。

レンジャーのおっちゃんは『やつはビールが好きなんだ。』と言っていた。
だからビールを買ってあげてみた。

またうまそうに飲むんだこれが。


そんなブランディーがあるとき、腕を怪我したんだ。
それはけっこうな大怪我で、縫わなきゃならなかった。

ところが、麻酔なんて気の利いたものはない。
と言う事で、俺が考え出したのは。
強いお酒を飲ましてべろんべろんにして、寝かせてしまおう。

タンザニアのウォッカみたいなのに、『コニャギ』と言うのがある。
それをやつに飲ませた。
かなりいける口だ。
なかなか寝ない。

結局3本空けたけど、それでもほろ酔い気味だった。
もう仕方ない。こうなったら強行作戦。
レンジャー総出で、ブランディーはがいじめ。

ブランディーさすがに暴れれない。
けっこうおとなしく。
そこで俺すかさず、簡単に縫合。

ブランディーも、すっげぇ眠そうだった。

あんなちょこっとの事で、ウォッカをたらふく飲めたブランディ。
かなりの幸せものだ。


ブランディ

写真は、ビールをたしなむブランディ。
人間で言うと、ちょうど中年のおっさんだ。
たぶんね、あかちょうちんとか、おでんとかかなり似合いそうなんだ。


ひとつ、残念なのは。
やつは孤独な事。
う~ん、昔奥さんいたらしいけど。
死に別れたそうだ。

でもやつはなんか楽しく余生を送っているようにも見える。
そして、やつは今でも元気だ。
きっとレンジャーたちと一緒に酒を飲み交わしているに違いない。





キーコ


ずっとずっと以前の、俺がまだ学生だった頃のお話。

大学の研究室では、いろいろな動物をそれぞれの研究室で飼育している。

マウス。
ラット。
ウサギ。
ヘビ。
ビーグル。
牛とか綿山羊とか馬。

あまり、書きたくはない事実であるのも確かだけれども。

これらの動物は、ほぼ実験動物として飼育しているんだけれども。

獣医学部の学生といえども、人の子だ。

大抵、情が移ってしまい。

実験が終了した後も、通常は殺処分しなければいけない動物たちをひっそりと飼育したり。

自分の家につれて帰っちゃったりする。


俺の所属していた研究室ではないんだけれども。

サルを飼っていた研究室があった。

もうとっくの昔に、サルを使用した実験は終了していて。

そのサルは、その研究室のマスコットみたいになっていたのだ。

サルの名前はキーコ。

メスのニホンザルだ。

俺はなぜかキーコと結構仲良しだったんだ。

キーコは、なぜか人間の女の人が大嫌いだった。

どうやら、高いボイスが好きじゃないらしい。

俺は時々、キーコをその研究室から借りて、散歩に一緒に行っていた。

キーコ

屋上で散歩するキーコと俺。


キーコと仲良しといっても、そこは動物と獣医の間柄。

時々キーコは襲ってくる。

俺はキーコに何もしていないにも関わらずだ。


そんな大学時代の思い出。


今キーコはどうしているのか俺は全く知る由もない。

風の噂じゃ、私立の動物園に引き取られたと聞いたけど、だいぶ前に聞いた話だ。


またどこかで。

会えるかもしれない。



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